有楽町皮膚科 PDT日記 有楽町皮膚科 無料相談  

アゼライン酸

アゼライン酸とは

アゼライン酸は、小麦粉やライ麦などの穀類に含まれる飽和ジカルボン酸で、催奇形性試験、遺伝毒性試験および耐性獲得試験がすべてで陰性であり、安全性が高い薬品です。  アゼライン酸の有効性は、海外ではすでに15%濃度の薬剤では確立されており、国際的な「ざ瘡治療アルゴリズム」の中でも、面皰から炎症性皮疹、集ぞく性ざ瘡にいたるまでの単独あるいは併用療法の第二選択薬として位置づけられています。 アゼライン酸には、皮脂の分泌抑制作用角化の抑制作用及び抗菌活性抗炎症作用が報告されており、非炎症性皮疹と炎症性皮疹の両者に対する有効性が期待できます。  アゼライン酸の掻痒や刺激感は、外用レチノイドによる鱗屑や紅斑などの副作用とは異なることから、外用レチノイドに副作用を感じる患者様に対して有効な治療手段となりえます。また、アゼライン酸には催奇形性がないため、妊婦の可能性のある女性に安心して使用できる特徴があります。

アゼライン酸は刺激性がない

近年、製剤技術の進歩により、刺激性の少ない20%アゼライン酸製剤が新規開発されました。  アゼライン酸製剤を用いて国内において皮膚刺激性試験を行ったところ、皮膚刺激指数は0という結果が得られました。

アゼライン酸は刺激性がない

国内の「尋常性ざ瘡患者」に対してアゼライン酸クリームを用いて安全性と有効性をみるため盲検無作為化左右比較試験を実施しました。いずれの製剤も一過性の刺激感はあるものの容認できる程度の刺激感であり、安全性は高く、ざ瘡に対して有効であるという結果が得られました。

20%アゼライン酸クリームの臨床試験結果

■皮膚一次刺激性試験
皮膚一次刺激性試験において評価基準は「刺激性は低い」に該当しました。
結 果:皮膚刺激指数0

■臨床試験
目 的:アゼライン酸にあける有効性および安全性の検証
試験品:アゼライン酸20%を含有するクリーム剤
試験デザイン:評価者盲検試験
対 象:軽症から中等症の尋常性ざ瘡患者で左右の皮疹の程度が同程度である者29名
使用方法:1日2回朝晩洗顔後、指定部位に塗布
評価方法:皮疹の計数(非炎症性皮疹数、炎症性皮疹数、総皮疹数)


アゼライン酸の酒渣治療に及ぼす効果

アゼライン酸は酒渣の治療にも有効です。
 酒渣の好発部位である顔面皮膚は、他の部位に比して被覆されることがなく、常に外界に露出され、特に自然免疫の受けやすい場所とも言えます。そこで、皮膚の自然免疫機構に着目し、酒渣病態を考察した結果、自然免疫機構により誘導される抗菌ペプチド、カセリサイディンの酒渣病態への関与が示されました。  通常、正常の皮膚では、カセリサイディンはほとんど検出されませんが、創傷や微生物感染のような危険信号が生じると大量にカセリサイディン抗菌ペプチドを誘導することが明らかになりました。

 一方、酒渣の表皮ではカセリサイディンの発現が常時増加しており、全体量が増えると共に、カセリサイディン・ペプチドの酵素による切断パターンが、正常皮膚のものとは異なっていることが明らかになりました。

 皮膚ではセリン・プロテアーゼであるカリクレイン5が主要なカセリサイディン切断酵素であり、酒渣でのカリクレイン5の発現を確認することができました。  正常表皮でのカリクレイン5が、表皮顆粒層から角化層に限局して分布するのに対し、酒渣表皮ではカリクレイン5が異常発現しているといえます。さらに酒渣皮膚では高いタンパク分解酵素活性を有しており、カリクレイン5の異常出現とタンパク分解酵素活性の増加により、カセリサイディン・ペプチドの酵素切断パターンの変化が起こされたと考えられました。


酒渣カセリサイディン・ペプチドによる皮膚炎症惹起については、カセリサイディン・ペプチドとカリクレイン5の異常増加によって、酒渣類似の皮膚炎症反応が誘導されることが証明されました。

自然免疫受容体であるToll様受容体・TLR2が酒渣皮膚では優位に好発しており、TLR2高発現が外界の刺激に対する感受性を高め、酒渣皮膚でのカセリサイディンとカリクレイン5の高発現を来していることも判明しました。以上のことから自然免疫機構をまとめると次のようになります。

酒渣における病状

@ 酒渣表皮では、TLR2が好発現している
A TLR2は、カセリサイディンとカリクレイン5を表皮角化細胞に誘導する。
B カセリサイディンとカリクレイン5の共発現が酒渣型カセリサイディン・ペプチド・パターンを形成する。

酒渣における抗菌剤の効果について

テトラサイクリン系抗菌剤作用の一つにタンパク分解酵素に対する阻害作用が確認されています。酒渣に対する低用量テトラサイクリン系抗菌剤の効能は、酒渣におけるカリクレイン5と、タンパク分解酵素活性の増加に対する抑制作用があります。また、アゼライン酸も、表皮細胞のカリクレイン5の発現に影響を与えることも分かり、レチノイドは、TLR2の発現を抑制します。このように既存の酒渣治療薬の効果の一部は、自然免疫からカリクレイン5に至る経路に対する作用となります。

酒渣病体における自然免疫機構の関与

自然免疫機構が外界に対する防御機構だけではなく、酒渣では皮膚炎症誘導機構として働いています。TRL2は細菌等の微生物の認識に関わる分子であり、微生物と酒渣皮膚との接点となります。TLR2の皮膚疾患への関与は、酒渣類似疾患であるざ瘡やステロイド皮膚炎でも指摘されます。ざ瘡の増悪因子であるアクネ桿菌は効率的にTRL2を活性化し、ステロイドは表皮細胞でのTLR2の発現を誘導します。すなわち、酒渣とその類縁疾患の病態の一部は、自然免疫応答の変化もしくは異常によるものであるということが判明しました。